金井美恵子 「愛の生活・森のメリュジーヌ」
ヘッセ 「荒野のおおかみ」
*
そういう視察によれば、「自殺者」は、個体化は罪であるという感情に襲われた人間なのである。人生の目的は自己の完成や表現ではなくて、自己の解体、母への復帰、神への復帰、全体への復帰だと思っているような人間である。こういう性質の人の非常に多くは、いつか実際に自殺をおかすということは、まったく不可能である。彼らはその罪を深く認識しているから。――だが、われわれにとってはやはり彼らは自殺者である。彼らは、生の中にではなく、死の中に救済者を見るのだから。自己を投げ出し、捨て去り、消えうせて、はじめに帰る用意ができているのだから。